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自衛隊違憲論と憲法9条と98条

 今は目立たなくなってしまったが、一昔前は、マスコミでも政治家の発言でもそれなりに「自衛隊違憲論」を目にする機会があった。そして憲法学者の世界では、今も自衛隊違憲論が有力である。

 では、自衛隊違憲論の立場に立つ場合、どうするべきか。憲法に違反する法令や国の行為は効力を有しない(憲法98条)ということを念頭におくならば、次の2つの選択肢が考えられる。

①違憲だから自衛隊は廃止すべきである

②違憲だから違憲状態を解消するために憲法9条を改正すべきである

 ①は非常に明快だが、これを本当に実現するとなると、自衛隊廃止をいったん決定したあとは、その翌年の自衛隊関連の予算は、自衛隊の廃止に伴う各種の処理に必要な費用(自衛官の転居・再就職とか、各種兵器や物品の処分とか)だけに限定する等の急速かつ徹底した取り組みが必要になるだろう。

 ②も明快であるが、これに対しては「理想を現実に合わせるのはおかしい。現実を理想に合わせるべきである。すぐには理想を実現できないとしても、いつかは実現できるように頑張るべきである。」という批判があるかもしれない。

 それではその理想がいつ実現できるかということになるが、上記の①のように、翌年とかそれに近い短期間内にもすぐ自衛隊を廃止するというのならまだしも、10年とか50年とか80年先というのであれば、その間は「違憲」の状態が続くことになる。違憲の状態が何十年も続いても良いのかということが次に問題になる。

 そして、実際には10年後とか50年後とかの具体的な将来の時点に自衛隊の廃止目標を設定するのも難しいので、結局、上記の「いつかは理想を実現できるように頑張るべき」論は、

 ③違憲だが、自衛隊の廃止は近い将来には無理だし、かといって9条を改正してしまうとそれはそれで歯止めがなくなって弊害も大きいから、今の状態のままで自衛隊を所持していけば良い

…という立場に落ち着く。

 これは、はっきり明言はしないものの、「自衛隊は違憲でも良い」「違憲のまま(日陰者として?)存在していてくれれば良い」ということである。とある憲法の研究書で、名前は忘れたが、ある学者が「憲法9条は、政府の裏切りを最小限に抑えるためにも今のままにしておくべきである。」という意味のことを書いていたが、これも言い換えれば結局は③の立場であろう。

 しかし、この③の立場は「自衛隊は違憲のままでもうまく所持してコントロールすれば良い」ということである。違憲(=効力を持たない)であるはずの自衛隊を国家が所持して良いというのは、立憲主義の論理としては破綻している。ただ、論理としては破綻していても現実の落としどころとしては確かに悪くはないように思える。

 戦後、今では考えられないほど「自衛隊は違憲」という主張が目立っていた時代、実はこの③のように考えている人が比較的多数派だったのではないか。しかし「自衛隊は違憲だが憲法9条は今のままで自衛隊を所持していこう」というのは、それ自体が「憲法に違反する法令や国の行為は無効」という憲法98条を無視する考えである。憲法9条を守るために憲法98条を破り続けてきたということになる。

 98条は立憲主義にとって重要な条文であって、「自衛隊は違憲だが、まったく無しにするのも当面難しいので、 日陰者扱いで所持していこう」というのは、平和主義の立場からはともかくとして、立憲主義の立場からはかなり異常な発想である。

 いうまでもなく「自衛隊合憲論」というのもあるが、それについてはまた機会を改めて考えてみたい。

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