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二重国籍を完全になくすのは不可能である件

蓮舫氏の騒動で、二重国籍の問題について世間で広く知られるようになったところだが、ここで日本における二重国籍というものの位置づけについて、制度的なポイントを改めて整理しておきたい。

(★なお蓮舫氏の場合は、当時の国籍法改正との関連で、以下の記述とは異なる点があることにご留意いただきたい。)

日本では、原則として二重国籍は認めていない。しかしながら、この原則を完全に貫くことはほぼ不可能であることも理解しておかなければならない。

まず、少なくとも一時的に二重国籍が発生することがありうる。

わかりやすい例でいえば、まず、日本人と(一定の)外国人の間で出生した子どもの場合である。
日本は国籍について血統主義を採用しており、単純化していえば、父か母かいずれかの片方が日本国民であれば、その子は日本国籍を有する(国籍法第2条)。

ところで、血統主義を採る国は日本以外にもあるから、その国の国民が日本国民と結婚した場合は、父母それぞれの国の血統主義が適用されるので、特別な規定が他にない限り、父母両方の国籍をその子は取得することになる。
たとえばイタリアは血統主義なので、日本人の男性とイタリア人の女性の間の子は、出生した時点で、日本とイタリアの二重国籍となる。

次の例として、日本国民同士の子であっても、出生地主義をとる他国で子が生まれた場合は、日本国籍とその国の国籍の両方を有することになる。

たとえばアメリカ合衆国は、自国領土で生まれた子どもは原則として米国籍を取得することとしている。従って、日本人夫婦がアメリカで出産すれば、その子は、日本国籍と米国籍の二重国籍ということになる。

このような二重国籍の日本国民は、原則として22歳までに、いずれかの国籍を選択しなければならず(国籍法14条1項)、日本の国籍を選択する場合は、そのことに加えて、さらに外国の国籍を放棄することを“宣言”しなければならない(同14条2項)。

この規定に従って、二重国籍だった人が、日本の国籍を選択し外国の国籍を放棄する宣言を行えば、そこですべて問題は解決し、二重国籍は解消されるのだろうか?

そういうわけではない。というのは、「日本の国籍を選択し外国の国籍を放棄する宣言」は、あくまで日本国に対して行う手続であって、もう一方の外国は何も関知していないからである。

そこで、外国の国籍を実際に離脱する手続を、別途、その外国に対して行わなければならない。国籍法第16条は、「(上記の)選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。」と定めている。

しかしここで一つ問題が出てくる。外国の国籍を離脱できるかどうかは、その外国の法制度や政府が決めることであって、日本の法制度や政府が決めることはできない。たとえば日米の二重国籍の人が、「日本国籍を選択して、アメリカ国籍を放棄する」と判断したところで、アメリカ政府が認めなければ、まったく意味はない。アメリカ国籍をどうするかは、アメリカ政府が決めることだからである。
それでは、個人の意思では自由に国籍を放棄することを認めていない国と日本との二重国籍の場合は、どうすれば良いのだろうか。

この場合、手続として不可能なことを求めるわけにはいかないので、その外国が国籍の放棄を一切認めないのであれば、どうしようもない。だからこそ、国籍法16条は、「外国の国籍を離脱しなければならない」ではなく、「外国の国籍の離脱に努めなければならない」としているのである。

このような場合、外国政府の方が国籍を喪失させることを認めてくれない限り、二重国籍を解消することはできないということになる。

このように考えると、国際結婚や外国での出産も行われている現在、二重国籍を完全に無くすことはそもそも(ほぼ)不可能であるということを、まず理解しておかなければならないだろう。(「ほぼ不可能」と書いたのは、たとえば国際結婚で生まれた人には日本国籍は与えないとか、日本人夫婦がアメリカで出産した場合は日本国籍は認めないとか、かなり非現実的で極端な(非人道的なことになりかねない)制度にすれば、形のうえでは、二重国籍を根絶することは一応100%不可能というわけではないからである。)

なお蓮舫氏の場合は、報道されている情報を見た限りでは、二重国籍の善し悪しの問題ではなく、それ以前のレベルで、行うべき手続(国籍の選択)を行っていなかったことが問題とされている。
もっとも現実の法律では、国籍の選択を怠った場合、先日の記事でも書いたとおり、罰則としては、戸籍法135条に定める「5万円以下の過料」でしかなく、これは刑法上の刑罰ではないので、いわゆる前科にもならない。

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