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山崎雅弘「日本会議 戦前会議への情念」(集英社新書)

山崎雅弘『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書) について。

第1章では、第三次安倍内閣の閣僚のうち日本会議(+神道政治連盟)のメンバーがかなりの比率を占めていること、慰安婦問題や南京大虐殺問題についての日本会議の言動、さらに中国の脅威を日本会議が強調していることなどを説明している。

第2章は、日本会議の形成に至る歴史的な流れ、その組織や人脈が説明されている。

第3章は、「日本会議の『精神』」と題されているが、実際は、安倍首相、日本会議の個々の関係者、神社界関係者などの断片的な発言を無造作に混ぜて並べて書いているという感じである。
さらに、この章で突然、戦前に文部省が国民の思想教育のために作成した冊子『国体の本義』と『臣民の道』を取り上げて、その内容を紹介しておいて、日本会議の設立宣言や公式目標などの記述が、この『国体の本義』『臣民の道』に類似していると主張している。
(しかし、日本会議が、『国体の本義』『臣民の道』を推奨しているという具体的な事実についての説明は、特に本書からは見受けられない。後に述べるとおり、日本会議関係者の個々の発言と、戦前の教科書である『国体の本義』『臣民の道』の主張に一定の共通する要素があるとしても、だからといって、この『国体の本義』『臣民の道』の内容そのものがそのまま日本会議の思想と同じだと言って良いのかどうかは別問題のはずなのだが…。)

第4章では、教育問題、家族問題、歴史問題、靖国神社問題などについて、安倍首相や日本会議(の個々の関係者)の発言を取り上げ、そこに前掲の『国体の本義』『臣民の道』の内容についての説明を交えているのだが、これらの書籍を安倍首相や日本会議が信奉して実践しているのかということについては、具体的な論証がない。
このため、安倍首相の思想と、日本会議(の個々の関係者)の思想と、『国体の本義』『臣民の道』の思想が、いつのまにかなし崩し的にごっちゃにされており、読者を困惑させる。

第5章は、安倍首相と日本会議の改憲に対する志向や改憲運動が取り上げられて、日本国憲法の基本的人権などの価値観が挑戦を受けているとしている。
ここでも、前掲の『国体の本義』『臣民の道』などが突然引用されて、それが日本会議や安倍首相の主張とそのまま同じものであるかのように記述が進んでいく。

全体的にいうと本書では、日本会議の論者たちのおおまかな政治的傾向は一応わかるのだが、著者は日本会議の関係者に直接取材をした痕跡はなく、基本的には各種の報道や刊行物や講演の引用を中心として成り立っている。
それで足りない部分(特に日本会議の思想の「中核」?を示したいような部分)では、突然論証ぬきで、戦前の『国体の本義』『臣民の道』の説明を脈絡なく持ち出して、それが日本会議の思想とまったくイコールであるかのような記述がなされている。
しかし、日本会議の言動に戦前のこれらの書物と類似する部分があったとしても、日本会議が直接言っていないことまで『国体の本義』『臣民の道』を持ち出して説明するというのは、話のすり替えではないのだろうか。
日本会議の思想と、『国体の本義』『臣民の道』の思想は100%同じなのかどうかが問題となるはずだが、その点についての肝心の説明がない。

著者は、安倍首相は日本会議と一体となって戦前回帰の思想に基づいた政策を行っていると言いたいようなのだが、安倍内閣の施策が基本的にすべてそういう観点で説明できるのかどうかの分析をしているわけでもない。

全体的にはかなり手を抜いて急いで適当な引用を集めて書いた本という印象が強く(しかも上述のとおり、直接現在の日本会議と関係があるとは言えない『国体の本義』『臣民の道』についての批評を混ぜて内容を水増ししている印象がぬぐえない)、日本会議についてどういう立場を取るにしても、あまり読む価値はないように思われる。

島薗進氏と内田樹氏が推薦しているというが、本当に中身を読んで推薦しているのかどうか疑いたくなる。
最近たくさん出てきた日本会議関係本で私が読むのは、これが最初なのだが、少なくとも本書は、どうも単なるブーム便乗で急いで適当に断片をつなぎ合わせて書き上げた本という感じである。

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