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長時間労働の問題は「コンプライアンス意識」だけの議論では済まない

電通に対して、複数の社員に違法な長時間労働をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで厚生労働省が強制捜査に入った。(たとえば毎日新聞の記事参照

一連の問題で、「電通にはコンプライアンス意識が欠けていた」という言い方がされている。もちろんこれは、まさにそのとおりなのだが、それは、「過搭載やスピード違反をする運転手やその運送会社には、道交法遵守の意識が欠けていた」などというのと同じレベルの話であって、かなり形式的・表層的な部分の問題の指摘にとどまるものであり、それだけではあまり実りのある議論にはならないと思う。

今回の捜査は、刑事責任の追及の観点から、あくまで「実際にどれだけの労働時間があったか」「どれだけ違法な残業や賃金不払があったか」を調べるためのものだろう。しかし本当に解明しなければならないのは、「業務や組織のあり方はどのようなものだったのか」「どのような業務・組織のあり方の結果として、このような長時間労働が行われるようになったのか」という点だろう。たとえば、クライアントからの仕事の発注の受け方、納期、その仕事を行うためにどのような作業が必要とされたか、等々の部分である(そこまで捜査が踏み込むかどうかは疑問だが)。

そして、業務や組織のあり方を徹底的に議論していくならば、たとえば
「仕事をたくさん取らなければ会社としてやっていけない。そのためには営業活動に労力を注がねばならない」
「納期が短い仕事を大量に受注せざるを得ない。そうなると膨大な労働時間が必要となる」
などという問題が当然でてくる。

それを踏まえたうえで、コンプライアンスを論じるとなると、
「それじゃあ、受注を減らして、売上を減少させても良いのか?」
「納期に余裕がある仕事しか受けないのなら、労働時間は少なくて済む。しかしそれでは売上が少なくなってしまう」
「残業を押さえつつ、なおかつ納期を守り、売上を維持するには、多忙な時だけ人間を雇って、それ以外の時は辞めてもらう体制にしなければならなくなるのでは」
「残業代を完全に支給するとすれば、そもそも基本給部分の設定を考え直した方が良いのではないか」
などの論点も(会社の視点でいえば)出てくるはずだろう。

本当は、そこまでホンネをいって、「コンプライアンスを徹底するとしたら、それと引き換えにどのような代償を会社(と社員)が払わなければならなくなるのか」についても検討して、初めて実りある議論になるのである。

なお、例の女子社員の自殺は、労働時間以外のパワハラとか風土の問題もあるはずだが、そちらは残念ながら解明されることはないと思う。単なる労働時間ではなく、具体的な人間関係や上司の管理・言動が問題となるのだが、そういう部分は表になかなか出てこないからである。

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