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『東洋経済』のイタリアの労働法改革の記事

安西法律事務所の倉重公太朗弁護士が『東洋経済』の記事で、イタリアの労働法改革について紹介している。第一東京弁護士会の労働法制委員会で、イタリアに現地調査に行ってきたのだそうである。

倉重弁護士によれば、

 「イタリアは、電車やバスがよくストライキをすることで知られるように、労働組合の活動が活発で欧州の中でも労働法が厳しい、労働者に有利な国でした。
 しかし、2016年の1月からイタリアでは労働法改革が行われました。少子高齢化や経済の低迷など、イタリアと日本の置かれた状況には共通点が多く、イタリアの労働法改革は日本にとっても有益な示唆に富んでいます。
 もともとイタリアの労働法は、日本と同様に厳しい解雇規制が存在しました
。」

…ということだったのだが、

昨年より、一部の差別的解雇を除き、原則として解雇は金銭で解決できるようになりました。」

ということである。

 イタリアの労働法の分野については、私は何も知らないので、それほど立入ったことは言えないのだが、気になって、下記リンク先の労働政策研修・研究機構のイタリア労働法改革についての報告を読んで調べてみた。

http://www.jil.go.jp/foreign/report/2015/pdf/0615_03-2-italy.pdf

 そのうえで若干のコメントをしてみる。

 まず上記の倉重弁護士の記事の書き方では、イタリアでは金銭さえ払えば自由に解雇できる制度になったかのように誤解する読者がいるかも知れない。しかし労働政策研修・研究機能の報告を見た限りでは、実際は、あくまでも解雇が違法とされた場合に、一定の場合について金銭解決を裁判所が命じるという制度である。

 また、要件に応じて、現職復帰による場合と、金銭解決(補償金)による場合と、それぞれの定めがある。別に金銭解決の方が「原則」(現職復帰が例外)とされているいうわけでもないように思える。

 なお倉重弁護士は、「イタリアと日本の状況には共通性がある」ということを強調しているのだが、記事を読んだ限りでは、共通点としては解雇が行いにくいこと(この表現も実は考えものだと思うのだが、とりあえずそれはおいておく)くらいではないだろうか。
 それ以外は、イタリアの状況は、政党等と結びついた大規模かつ強力な(企業別でない)労働組合が存在することとか、ストライキが頻繁に行われるとか、若年層の失業率が40%台だとか、日本とはかなり違う。

 そもそもイタリアはともかく、日本の労働市場は「硬直的」なのだろうか。それは一面の真実なのかも知れないが、物事の半分しか見ていないように思われる。もう少し正確にいうと、日本の雇用システムは、企業を超えた労働市場全体で見れば「硬直的」なのだろうが、企業の内部での取扱という意味では、イタリアよりはるかに柔軟と言うべきでないだろうか(残業、転勤などを考えてみれば良いだろう)。

 そして、日本の企業の内部での扱いの柔軟性と、日本企業が終身雇用を原則としていることとは表裏一体の関係にある。つまり「内側の柔軟さ」と「外側での硬直性」(?)とが密接に結びついているのであって、すべてにおいて日本の雇用システムが硬直的だというわけではないと思う。

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