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小谷野敦『芥川賞の偏差値』

 小谷野敦『芥川賞の偏差値』(二見書房を著者ご自身からお送りいただいたので、紹介する。

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 第1回(1935年上半期)から第156回(2016年下半期)までの芥川賞受賞作の合計164作品を取り上げて、その作品についての著者としての評価を偏差値方式で表現し、コメントを付けている。

 著者から最も高い評価を受けているのが、村田沙耶香『コンビニ人間』(2016年上)、李良枝『由煕』(1988年下)、高橋揆一郎『伸予』(1978年上)の3作で偏差値72、最も低いのが楊逸『時が滲む朝』(2008年上)である。

 ここに挙げられた164作品のうち私が読んだことがあるのは、小島信夫『アメリカン・スクール』、庄野潤三『プールサイド小景』、多和田葉子『犬婿入り』、辻仁成『海峡の光』くらいである。あと、池澤夏樹『スティル・ライフ』も読んだような気がするが、今ひとつ記憶に自信がなく、いずれにしてもこれらの作品の内容はほとんど頭に残っていない。従って、本書での164作品の評価の内容については私はほとんど何も言えないのだが、ただ著者自身が「あとがき」で皮肉っぽく言っているように、芥川賞をとる秘訣は「退屈であること」「ただし、いかにもうまいという風に書いて、かつ退屈であること」のようなので、これらの作品を読んでもあまり記憶に残らないのも仕方ないのかも知れない。

 さて、上に挙げた私が読んだ作品の中で比較的印象に残っているのは、辻の『海峡の光』である。確か、学校のいじめられっ子が刑務所の刑務官になり、かつてのいじめっ子が服役者として収容されてくる・・・という話だったと思う。
 辻仁成については、有名なので名前はよく知っているが、作品で私が読んだのは、この『海峡の光』と『クラウディ』だけである。『クラウディ』は、それなりに面白い青春小説(?)だと思っていたが、その後、『海峡の光』を読んで、同じ作家の手によるものだとは思えず、しかも一人称の割に文章が堅苦しく不自然だと思って不思議に感じたものである。
 本書の著者によれば「芥川賞狙いで書いたからかぎくしゃくしている」ということで、賞の審査を意図してわざわざ堅苦しい文体にしたということだろうか。

 なお本書で挙げた164作のうち、偏差値50(つまり平均レベル)を超えていると著者が考える作品は41作しかなく、なかなかシビアである。
それでは、どんな作品なら著者は良いと考えているのか?という疑問を読む者は感じるところだろうが、その点は著者は巻末の「では名作はどこに」というコーナーで答えている。ここでは谷崎潤一郎や川端康成から、柳美里や西村賢太まで、芥川賞とは別な41作品が列挙されている。
 (柳美里や西村賢太は、芥川賞受賞作はどちらも偏差値44とされているが、それとは別にすぐれた作品を書いている、ということである。実際、芥川賞は本来新人賞なのだから、何もおかしなことではないだろう。著者も『芥川賞受賞作などというのは別に名作群ではない』と述べている。)

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