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呪いのわら人形と脅迫罪

 朝日新聞の記事によれば、群馬県で、ゲームセンター経営者の女性の名前を書いた“呪いのわら人形”に釘を刺して、その女性が使っている駐車場に置いておいた男が、脅迫罪の疑いで逮捕されたという。

 法学を学んだ人なら知っていると思うが、刑法の教科書によく出てくる論点として、「わら人形に釘を刺して誰かを呪い殺そうとしたら(=“丑の刻参り”)殺人未遂になるか?」というのがある。
 もちろんわら人形で呪っても人を殺すことはできない(と現代の科学では考えられている)ので、結論としては殺人未遂にはならないのだが、この記事の事案では「殺人罪(の未遂)」ではなく、「脅迫罪」で逮捕されている。

 脅迫罪は、相手の生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加えるということを告知して脅した場合に成立する。

 この記事の事件は裁判にはまだ至っていないのだが、脅迫罪にあたると警察が判断した理由は、いうまでもなく呪いに危険なパワーがあるからではなく、呪いのわら人形に釘を刺して相手に見せつける行為は、今後(単なる呪いにとどまらず)現実に危害を加える意思があることを示したことにもなると考えられたからだろう。
 一般的にいって、釘の刺されたわら人形を見て恐怖を感じるとすれば、それは呪いのパワーが恐ろしいからではなく、本当に刺されたりするのではないかと思うからである。

 ただ実際には、脅迫といえるかどうかの線引きが微妙な事案は多いと思われる。
 たとえば「お前を殺してやる」といえば、実際に殺す意思はなかったとしても、相手に「殺されるのではないか」と思わせて脅す意思はあったことになるから、脅迫罪が成立しうる。
 しかし「お前は神の怒りに触れて落雷により死ぬだろう」と言ったとしても、神の怒りや落雷を自分でコントロールできるとは普通は考えられていないから、脅迫罪にはあたらないというのが、一般的な刑法の文献での説明である。
 ただし、脅迫する側の人間には神の怒りや落雷をコントロールできる能力がある、と相手側が信じている場合は、脅迫罪が成立するとされる。(たとえば、神通力があると称している宗教の教祖が、その信者を脅すような場合である。)

 なお脅迫罪は、さきほど述べたように、相手側に「告知」しなければ成立しない罪である。従って、相手に知らせることなく、こっそり丑の刻参りをしてわら人形に釘を刺しても、それだけでは脅迫罪は成立しない。相手の聞いてないところで「お前を殺してやる」と言ったところで脅迫罪には当然あたらないのと同じことである。

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