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「労働時間ではなく成果に応じた報酬」とは、「出来高払い」のことですよね?

昨日のエントリの続きの補足。

 「労働時間ではなく、成果に応じた報酬にするべきだ。これこそが働き方改革だ!」という主張が、いまや大流行である。私も別にこれを全否定するわけではないのだが、全肯定というわけでもなく、慎重に考える必要がある。

 そもそも「労働時間ではなく、成果に応じた報酬」という言葉の使い方にはブレがあり、意味があやふやなまま流行っている感じがないでもないので、注意が必要である。ここで整理というか補足をしておきたい。

 「労働時間ではなく成果に応じて報酬(賃金)を払う」という言葉の意味を厳格にとらえるなら、まず、どれだけ労働時間が短くても、一定の成果を出せば、その成果に応じた賃金がもらえるということになる。一般に、労働時間短縮とか残業削減の議論の中で、長時間労働を解決する対策として「成果に応じた賃金にすれば良い」という意見を出す論者は、この点に着目している。
 (ただし、たとえば効率が非常に良くて午後3時に仕事を仕上げてしまうような社員がいた場合、会社は、毎日その社員を午後3時に帰らせるままにしておくだろうか?自分が経営者だったらどうするか考えてみれば良い。普通は、余力があると判断して、さらに仕事量を増やすはずである。優秀というか効率の良い人には、ますます仕事が任されるものである。)

 しかし物事は逆のケースも考えなければならない。「成果に応じた賃金」を純粋に考えていくと、どれだけ長く働いても、成果が出なければ賃金が出ないということになるはずである。一番わかりやすい例は、昨日のエントリで取り上げた、請負形態のアニメーターである。アニメ作品で自分が分担する工程を完成させて納品しない限り、1円ももらえない。何十時間かけようと、納品が終わるまではゼロ円である。

 もう1つのわかりやすい例としては、完全歩合給のタクシー運転手である。売上の一定パーセンテージを賃金として支給される。どれだけ長く働いても、売上が増えなければ、賃金も増えない。(ただし現実には、タクシー運転手にも最低賃金法や労働基準法の適用があるので、一定の労働時間があれば賃金ゼロというわけにはいかない。)

 このように、アニメーターとタクシー運転手は、「労働時間ではなく成果に応じた報酬」ではあるが、これらの職種は労働時間が短くて済んでいるのだろうか。もちろんそういうことではない。

 一方、いわゆる「ホワイトカラーエグゼンプション」(WE)の制度についても、「労働時間ではなく成果に応じた報酬の制度」と称されることがある。WEとは、たとえば年俸や月俸を定額で決めておいて、残業代を支給しない制度である。日本では全面的には導入されていないが、現在でも、いわゆる管理監督職(部長や課長など)については、このような仕組が労働基準法でも認められており、残業代を支給しない企業は多い。

 たとえば東洋経済のこの記事では、

 “ホワイトカラーエグゼンプションとは、労働法上の規制を緩和・適用免除される労働者を対象に、働いた時間に関係なく、成果に対して賃金を支払うという仕組みのこと。働いた時間ではなく「成果」によって報酬が決まる制度で、そこには長時間残業や休日出勤という概念もありません。”

 と書いており、「WE=労働時間ではない成果に対して賃金を払う仕組み」という図式で考えている。

 しかしWEというのは、残業代が支給されないというだけであって、成果によって月々の賃金が変わるわけではない。月俸50万とか年俸1000万と決めている以上、成果が出ようと出まいと、毎月の賃金は一定のはずである。月俸50万円のビジネスマンが、大きな成果を上げた月は月俸80万円になるのだろうか。成果が上がらなければ月俸20万円に減るのだろうか。そんな制度を導入している会社は、まず存在しないだろう(皆無とまではいわないが、ほとんど無いだろう)。

 もちろん、成果の善し悪しは、人事評価や昇給査定などで判断されるだろう。そこで翌年の年俸とか月俸には影響するだろうし、成果が悪ければ金額を下げられるケースもありうる。しかしこれは、WEかどうかに関係なく、どんな会社員にでもありうることである。残業代を支給される“普通”の労働者でも、人事評価や昇給査定はある。

 WEは、「労働時間ではなく成果に応じた賃金を受ける制度」ではない。ただ単に「労働時間と無関係に、定額の賃金を受ける制度」に過ぎないのである。

 本当の意味での「労働時間ではなく成果に応じた賃金」とは、WEではなく、請負アニメーターや歩合制タクシー運転手のような、いわゆる出来高払いのことである。皆さん、言葉の使い方を間違えないように注意しましょう。

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