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2017年4月

クックパッドのレシピで健康被害が起こった場合の責任は?

 東京で生後6ヶ月の乳児が、蜂蜜の入った離乳食が原因で、乳児ボツリヌス症により死亡したという事故のニュースをきっかけに、蜂蜜入り離乳食のレシピを掲載していたクックパッドにも批判が集まった。批判を受けてクックパッドは、「1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないで下さい」という警告を掲載している。

 今回の事故そのものは、クックパッドのレシピによって引き起こされたわけではないようだが、仮にクックパッドに掲載されたレシピに重大な欠陥があって、それに従って作った料理でユーザーに健康被害が起こった場合、運営しているクックパッド(株)は責任を負うのだろうか。ここでは法的観点で考えてみたい。

 まず、欠陥レシピそのものを掲載して不特定多数に情報提供をしたという点で、クックパッド(株)に一定の責任が発生しうることを否定するのは困難だろう。
 クックパッドのレシピは、ユーザーが実際に料理に使うことを前提として掲載しているのであり、欠陥レシピであれば健康被害が生じうることは、クックパッド(株)としても当然に予見できる。

  (*もちろん、現代の科学の水準で健康被害が予見できないような欠陥というのであれば話は別である。いずれにしても、詳しい議論は割愛するが、ここでは、クックパッド(株)に、民法でいう「不法行為責任」が成立することを前提とする。

   なお、2ちゃんねるのような匿名掲示板に掲載されたレシピと、クックパッドのレシピとで、健康被害が起こった場合の責任の評価が違ってくるかどうか、という論点もあるだろう。ここではあまり深入りできないが、単にどこかの誰かが掲示板にレシピを書き込んだものが表示されているだけの場合(2ちゃんねる)と、企業が、積極的にレシピを掲載するサイトであることを売りにして、ユーザーを誘っているような場合(クックパッド)とでは、同列に考えることはできないだろう。)

 ただ、クックパッドのサイトには、「利用規約」へのリンクがあり(ただし目立つところに貼ってあるわけではない)、この「利用規約」には 「本サービスをご利用される場合には、本利用規約に同意したものとみなされます。」「利用者は、利用者自身の自己責任において本サービスを利用するものとし、本サービスを利用してなされた一切の行為およびその結果についてその責任を負うものとします。」などという条項がある。

 これだけ見ると、クックパッドのサイトを利用した以上は利用規約に同意したとみなされ、その利用規約には自己責任の規定もあるから、健康被害が起こってもユーザーの自己責任で済まされるかのようにも見える。

 しかし、「本サービスを利用する場合には、本利用規約に同意したものとみなす」というのは、あくまでもクックパッド(株)が勝手にそのように述べているだけである。クックパッド(株)が一方的に述べているだけなのに、ユーザーが拘束されるとはいえないだろう。

 ユーザーを拘束できるためには、クックパッド(株)とユーザーとの間に、何らかの「契約」が成立しているといえなければならない。そして、契約が成立しているといえるためには、両方の当事者の間で意思表示が合致している必要がある。

 この件では、クックパッドが一方的に利用規約を記載してリンクを貼り、「利用したら、本利用規約に同意したとみなす」と勝手に宣言しているだけであって、そこにはユーザーの意思表示はまったく介在していない。

 このように、一方の側が一方的に何か宣言しているだけでは、契約が成立したとはいえないのであって、相手側からの何らかの意思表示といえるものも必要である。

 たとえば、ユーザーがレシピを見ようとすると、「本利用規約に同意します」というクリックボタンが画面に表示されて、そのボタンをユーザーが押して初めてレシピが表示されてくる、という構造であれば、話は別である。そこでは、ユーザーが「同意します」のボタンをクリックする形で「意思表示」をしたことになるからである。

 ところがクックパッドのサイトの場合は、このユーザー側からの意思表示は何も存在しないし、そもそも利用規約があることすら知らなくてもレシピを見ることができてしまうのである。これでは、ユーザーが利用規約に同意したと解釈することはできない。
 従って「自己責任」についての規定も適用されないことになる。(なおユーザーが「会員登録」などをする場合は、また違ってくる。登録をする時点で、ユーザーの「意思表示」が発生しうるからである。)

 それでは、健康被害が起こった場合に、クックパッドがその損害について100%損害賠償責任を負わなければならないのかというと、それはまた別問題である。クックパッドに掲載された欠陥レシピについて、健康上の問題について確認もせずそのままうのみにして利用した場合、そのユーザーにも落ち度というか不注意(「過失」)があった、と判断できる場合もあるだろう。その場合は、「過失相殺」という考えに立って、損害賠償の額が減額されることになる。

 もちろん、過失相殺が認められるかどうか、またどの程度認められるかは、ケースバイケースである。たとえば、クックパッドが、サイトの中で、ユーザーにとって非常に見つけやすい位置に、大きく「このレシピの安全性を保証するものではありません。安全性についてはユーザーが自らの責任でご確認下さい」とでも表示していれば、過失相殺は認められやすくなるだろう。

今村復興相、「東北で良かった」発言で辞任

 今村復興相は、25日、所属する自民党二階派のパーティーでの講演で、東日本大震災の被害に関して「まだ東北で、あっちの方だったから良かった。首都圏に近かったりすると、莫大(ばくだい)な、甚大な額になった」などと発言して非難を浴びていたが、早くも辞任の意向を固めたという。

参照:産経新聞の記事

 私は先日のエントリーで、今村復興相と山本地方創世相のそれぞれの「失言」を比較したばかりである。今村復興相の自主避難に関するあの発言は、あくまで政策の妥当性の問題であって、大臣個人の失言とか暴言と考えるべきではないと今でも考えている。自主避難については、若干の表現の仕方はさておき、今村復興相は、政府全体の方針に則って発言していただけだからである。(ただし山本地方創世相の「学芸員はガン」発言はそうではない。政府の方針とは何にも関係はない、まさに「失言」である。)

 これに対して今回の今村復興相の発言は、「失言」「暴言」と非難されてもやむをえないだろう。厳密にいうと、非難されるべきは、前半の「東北だから良かった」の部分であって、後半の「首都圏に近かったらもっと損害が大きかっただろう」という部分ではない。

 なお、この発言について、「ホンネはともかく、実際にそう思ってても言ってはいけない」という評価の仕方をする人もいる。間違いではないが、少々ピントがずれていると思う。
 「東北だから良かった」というのは、「あいつを本当はぶん殴ってみたい」とか「他人の不幸が面白い」というほどではないにしても、やはり劣悪な発想である。
 もちろん人間というものは完全な存在ではないから、大臣でも一般人でも、私でも誰でも、いろいろ劣悪な発想を心の中で思い浮かべることはある。心の中で思い浮かべるだけなら、いちいち非難する必要はない。
 しかし、いちいち「他人を殴ってみたいと心で思っていても、口に出してはいけない」などと注意する意味はあるのだろうか。そのようなことは、わざわざ言われなければわからないのだろうか。
 そもそも一般人が思いつきでいった発言ではなく、政治家、それも東北の復興を仕事とする大臣の発言なのである。「復興大臣は、東北を復興するのが仕事なのだから、『東北でなくて良かった』ということを、心では思っていても、実際には口に出してはいけない」などとわざわざ注意してあげなければわからないのだろうか。そういう問題ではあるまい。

東芝が自社株購入呼びかけ

共同通信の記事によると、東芝が社員に「持株会」で、自社株の購入を呼びかけたという。

記事によれば

経営再建中の東芝が、東京証券取引所による「監理銘柄」の指定で上場廃止の恐れが指摘される中、社員向けに自社株購入を呼び掛けていたことが21日、分かった。自社株を保有する社員の多くは、系列の米原発会社の経営破綻などを背景に株価低下で含み損が出ており「会社のモラルを疑う」と反発している。

 東芝関係者によると「東芝持株会2017年度4月定例募集に関する件」と題した文書で全社員に周知された。4月3日から募集を始め、監査法人からの適正意見を得ずに決算発表するなど混乱が続く中で21日に締め切った。

・・・ということである。

記事をなんとなく読むと、経営危機に陥って株価が低迷しているので、株価を維持するために無理矢理社員に買うように呼びかけているかのような印象を受けるが、そうではないだろう。

社員(東芝では、「従業員」と呼ぶのが正式である)に配布された文書が「東芝持株会2017年度4月定例募集に関する件」と題されていることからもわかるように、これは、あくまで定期的な持株会の募集のルーチンの通知にすぎない。

たまたまこういう時期だからマスコミに取り上げられて騒がれているだけであって、経営危機であろうとなかろうと、東芝が持株会制度を備えている限り、定期的に従業員に配られる通知である。

もちろん、従業員に配られた通知に「危機の今こそ、持株会に入って、会社の株を支えましょう」とでもいう社長名義の文章があったら話は別だが、そんな文章があれば、マスコミに漏れてもっと騒がれているはずである。

今村復興相と山本地方創世相の「失言」は同列に扱うことはできない!

 今村雅弘復興担当相山本幸三地方創世相の発言が、相次いで「失言」「暴言」として取り上げられている。
 しかしこの2人の大臣の発言は、まったく位置づけというか意味合いが違うので、同列に扱うことはできない。

 まず今村復興相の発言は、基本的には政府の方針に沿っているものであって、「被災者の感情を大臣が踏みにじったかどうか」を独立して議論しても仕方ないものである。

 例の発言の経緯としては、福島県が自主避難者への住宅の無償提供が3月末で打ち切ったことが話題として取り上げられて、そのうえで復興相は「(帰るか避難を続けるかは)基本的に本人が判断すること」と述べ、さらにまだ帰還できない(自主避難の)人については、「本人の責任、本人の判断」と述べている。

 (なお、避難したこと自体が自己責任、という意味ではなく、今なお帰らないのは自己責任、という意味だろう。)

 これは、善し悪しはともかくとして、政府の現在の基本的な方針を反映したものであって、復興相個人が適任かどうかとか失言とかいう問題ではない。復興相は政府の方針に沿った発言をしたに過ぎない。
 (政府全体としては自主避難者について「本人の責任、本人の判断」と考えていないのに、復興相が勝手にそういう発言をしたというなら、もちろん話は別であるが。)
 復興相が辞任したり発言を撤回したたところで、この政府の政策が変わるわけではない。

 もちろん政府として公に「自己責任論」という露骨な言い方をしているわけではないが、基本的方向性はそういうことであって、それがいけないとすれば、復興担当大臣を替えることによってではなく、政府の政策全体を議論して変更することによって解決するしかないだろう。

 つまり議論すべきは、今村大臣の発言の善し悪しではなく、自主避難者への支援をどこまで政策として行うかということなのである。
 
 一方、山本幸三地方創世大臣の方はどうかといえば、「学芸員はガンだ、一掃すべき」というのは、表現自体の善し悪しもさることながら、まさか政府が、公的な制度である「学芸員」を、地方創世にとって有害な存在だと考えて一掃するような政策方針で動いているわけではないから、暴言以外の何者でもなく、このような勝手な発言をする者が大臣にふさわしいかどうかを正面から議論すべきである。

 今村大臣は(言い方の善し悪しは別として)政府の方針に沿った発言をしたが、山本大臣は、政府の方針とは何の関わりもない暴言を吐いた。これが両者の違いである。

政府が検討しているのは、仕事の「成果」に給料を払う制度ではない!

以前何度か書いたこととも重複するが、けさの日経新聞を見て、一言。

日経新聞の記事によれば、

政府・与党は労働時間ではなく仕事の成果に給料を支払う「脱時間給制度」を盛り込んだ労働基準法改正案の今国会成立を見送る方針を固めた。
 7月の東京都議選を控え、与野党の対決が見込まれる同法案の審議は得策ではないと判断した。
 秋に予定する臨時国会で、残業時間の上限規制などを含む「働き方改革関連法案」と一体で審議し、成立をめざす戦略だ
。”

とされている。

この書き方だと、「これからは仕事の成果を評価してもらえる賃金制度になる!」というふうに錯覚する読者がいるのかも知れない。(だが、現在は、仕事の成果を評価できない賃金制度なのか?そうではないだろう。)

しかし政府・与党が検討している労働基準法改正案のキーポイントは、年収1075万円以上の専門職について、1日8時間・週40時間労働という原則や、時間外割増賃金等の支払義務を免除するというものである。

要は、ただ単に、労働時間の規制や、時間外割増賃金(残業代)の支払義務をなくすというだけであって、労働時間に関係なく、固定額の賃金が支払われる制度にすぎない。

くれぐれも誤解しないようにしなければならない。

労働基準法改正で目指そうとしているのは、「労働時間ではなく仕事の“成果”に給料を払う制度」ではなく、「労働時間に関係なく固定額の給料が払われる制度」である。その固定額の給料が「成果」にふさわしいものなのかどうかは、労働基準法の知ったことではない。個々に会社と労働者が判断するべきことである。

なお、本当の意味で「労働時間ではなく仕事の成果に給料を払う制度」としては、出来高払いのアニメーターや、売上に応じた賃金のタクシー運転手などが適切な例であるということも、このブログで、以前に述べたところである。

百田尚樹と漢文教育否定論と加地伸行

 雑誌SAPIOの5月号に、「禁断の日本再生論」という特集があり、いろいろな(このような立場の雑誌ではおなじみの?)論者が参加しているが、その中で、百田尚樹が「対中政策の秘策 中国を偉大な国と勘違いさせる「漢文」の授業は廃止せよ」という記事を書いていた。

Sapio_2

 実際に読んでみると、漢文うんぬんは少し触れているだけで、主眼というわけではなく、中国の軍事的脅威がメインの内容だった。
 漢文教育は、役にも立たず、警戒すべき相手である中国に対して無用のあこがれを起こす勉強だから無益だという趣旨のようである。

 ただ気になったのは、「史記や三国志に日本人はあこがれているが、とんでもない。中国は凄まじい、恐ろしい国だ」という趣旨のことを述べていたことである。
 三国志はともかくとして、史記は、中国の歴史のなかなかエグい側面も描いているのではないだろうか。

 平凡な結論になってしまうが、単に理想化するのでもなく、否定的にだけ見るのでもなく、肯定的・否定的な様々な側面から中国の歴史文化を学んでいくことは有益だと思うし、そのための教養として「漢文」を学ぶのも悪くはないと思う。

 それにしても百田といえば日本会議。そして日本会議といえば、中国思想研究者の加地伸行もメンバーのはずだが、加地はこの百田の発言をどう思っているのだろうか。

 加地伸行といえば、かつて「二畳庵主人」というペンネームで、通信教育のZ会で「漢文法基礎」という面白い参考書を出版していて、私も大学受験の頃にお世話になった。(これは長らく廃刊になっていたものの、数年前に講談社学術文庫から再刊されたが、当初のZ会版にいろいろ載っていた興味深い例文がカットされているので、本来の魅力がだいぶ削がれてしまっている。)

 百田には、是非とも日本会議の会合で、加地伸行に向かって「漢文教育なんか中国に対する憧れや幻想をばらまくだけで、有害無益です。やめるべきですよね」と問題提起をしてもらいたい。(なお加地伸行は、中国に対する「あこがれ」「幻想」などは持っていないと思うが。)

Kanbunpou

香山リカがチャンネル桜および出演者に対して訴訟を提起

 香山リカの3月30日付のブログ記事によれば、チャンネル桜のインターネット番組『沖縄の声』に出演した人物3名と、株式会社日本文化チャンネル桜を相手として、東京地裁に訴えを提起したという。

 香山リカ自身のブログおよびツィッターでは、「東京地裁に訴えを提起しました」という言い方しかしていないが、事案の内容を見る限りでは、名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟ということだろう。

 (ここで政治的・思想的な次元の議論には触れるつもりはないが)問題となったチャンネル桜の番組を私は見ていないので、香山リカ自身のブログ記事での説明をとりあえず紹介すると:

 チャンネル桜の2016年10月27日の 「【沖縄の声】ヘリパッド反対派を初起訴、香山リカのツイートが法に触れる可能性あり」というタイトルのコンテンツで、まず、キャスターの栗秋琢磨という人が、香山リカについて、「対面診療義務違反」「プライバシー侵害ないし守秘義務違反」を自らのツィッター投稿により犯していると主張し、さらに、「香山リカの勤務先の診療所に医師法の違反が疑われて監査が入った」「千代田の保健所から監査が入った」等という趣旨のことを述べ、それについて、平原伸泰および鉢嶺元治という出演者が相づちを打つなどした、ということのようである。

 まず、香山リカのツィッターでの一定の言動が「対面診療義務違反」「プライバシー侵害ないし守秘義務違反」にあたるかどうかは、問題となっている特定の言動が具体的にどのようなものだったのか、そしてそれをどのように法的に評価するかの問題であるが、ここでは立ち入らない。

 一方、「保健所から監査が入った」と述べた点については、一定の事実についての主張であるが、監査が実際におこなわれていたかどうかにかかわらず、まず、それは香山リカの社会的評価を低下させる発言として、名誉毀損にあたると評価される可能性がある。名誉毀損は、真実であったとしても成立しうる。
 (ただし、以下に述べるとおり、一般論としては、一定の要件をみたす場合に、主張した内容が真実であるか、真実だと誤信したことに相当の理由があった場合に、違法性が阻却されて、名誉毀損が成立しなくなる場合もある。)

 この件で、栗秋が反論するとすれば、名誉毀損について、違法性阻却の事由があることを主張するのが定石だろう。
 具体的には、①自分が香山リカについて述べたことは、公共の利害に関する事実にかかるもので、②目的がもっぱら公益を図ることであり、③真実である(または真実でなかったとしても、真実だと誤信するのに相当の理由があった)、と主張すると思われる。もちろんこの主張が裁判所で認められるかどうかは、やってみなければわからない。

 なお、ブログでの説明を見る限りでは、平原および鉢嶺という人は、ただ単に相づちを打つに近い発言だったようにも見える。ただ単に相づちを打っただけでも名誉毀損にあたるのかどうかという点は、興味深い論点になる可能性があるだろう。(実際の番組では、もっと踏み込んだ発言をしていたのかも知れないが、そこは見ていないのでわからない。)

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