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石川健治の「自衛隊明記」論批判と大屋雄裕のつぶやき

何となく、ネットでいろいろな人のツィッターやらブログやらあちこちを見ていたら・・

 先日のエントリでちょっと名前を出した大屋雄裕(慶応大教授・法哲学)のツィッター(5月21日)で、

 “まあ職務に相応する正統性を付与しないというような刑吏に対する差別というのは洋の東西を通じて存在し、石出帯刀に御目見は許されないし山田浅右衛門は浪人だったわけですが、我が国の場合にそれがどういう問題に繋がっているかということも考えずにああいうことを書かれるわけですか。”

という一言があった。

 はて、これは何のことを言っているのだろう。「♯何かを見た」というタグも付いているが、これを付けた人たちのつぶやきにも統一性があるわけではない。「正統性を付与」とは、何についての「正統性」の話なのだろう。やけに気になってしまうではないか。

 大屋教授が何のことを言っていたのかはわからないが、ここでふと思い出したのが、石川健治(東大教授・憲法学)の発言である。

 5月21日の中日新聞で、石川健治は、憲法を改正して自衛隊に「正統性」を付与することを危惧し批判していた。例の安倍首相の「憲法学者の中では自衛隊違憲論が有力だ」「憲法9条に3項を新設して、自衛隊を明記すべきだ」という見解を批判するインタビュー記事である。

 この記事での石川教授の主張の要点は次のとおりである。

①憲法9条は、軍隊を組織する権限を否定し、自衛隊に権限行使の正統性を奪っている。
②この9条のおかげで、自衛隊の憲法上の根拠は弱く、その正統性には弱点があり、自衛隊も「身を慎む」組織として統制されてきた。
③9条に3項を新設して自衛隊を明記してしまうと、正統性を付与されるから、自衛隊はあぐらを書いてしまい、憲法上は軍事力に対するコントロールがなくなってしまう。

この主張にとびつく人も結構いるようだが、ちょっとよく読んでみると、論理的におかしなことに気づかないだろうか?

①は、まさにいわゆる自衛隊違憲説であり、一つの有力な解釈である。これはこれでわかる。
それでは、②はどうだろうか。自衛隊違憲説の立場からは何も問題ないように思えるが、そうではない。

①は、 「自衛隊は憲法上は否定される」「自衛隊に正統性はない」ということである。
つまり、「自衛隊の憲法上の根拠は弱く、正統性に弱点がある」(②)のではなく、①の理屈でいうなら、「自衛隊の憲法上の根拠はなく、正統性はない」というべきである。

自衛隊という組織に根拠も正統性もないというのなら(それが石川の主張の①の部分)、そんな組織にコントロールもへったくれもないはずであって、政府は自衛隊を廃止するしかないはずである。

記事で見る限り、石川教授の主張は、①と②の間に論理の飛躍がある。もともとは「自衛隊には憲法上の根拠・正統性はない」(①)という話だったのに、それが「自衛隊には憲法上の根拠・正統性が弱い(=だから統制できている)」(②)という話にすり替わっているのだ。

正統性がない」というのと「正統性が弱い」というのは、大違いであって、つなげることはできない。

なお③の部分についても触れておくると、石川教授の「正統性を与えると、自衛隊は暴走してしまう。適切に権力組織を統制するためには、憲法上の正統性を与えないことだ」というロジックをおしすすめるならば、警察の権力乱用や暴走を防ぐためには、警察も憲法違反にして、正統性のない組織にすれば良いということになるのだろうか。

さて、どうしても上記の主張の論理矛盾を解消して、結論部分だけを生かしたいのであれば、②③の部分はそのままで、①の部分だけ、こんなふうに若干言い回しを変えれば良い。

①憲法9条は、軍隊を組織する権限を否定している可能性が高く、自衛隊の権限行使の正統性には疑いがある。ただしあくまでも「疑い」なので、自衛隊が憲法違反でない可能性も無いではない。私には明確な結論は出せない(or「明確な結論は出したくない」)。

(なお別な逃げ道として、「自衛隊は憲法9条違反だ(と思う)が、最高裁が違憲判決を下さない限り、当面は自衛隊が存続するのはやむをえない。しかし正統性に疑問があるから・・・」という切り口もある。)

どうでしょうか?石川先生。

★私自身としては、以前も書いたが、憲法の後ろの方に経過規定として「附則」のようなものを設けて、「当面の間、最低限の防衛力として自衛隊を保有することを妨げない」という形にするのが良いのではないかと考えている。

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