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待機児童問題は、保育料の値上げで「解決」すれば良い?

本日の日経新聞の「経済教室」は、「待機児童解消できるか (上)」というタイトルである。
 経済学者の宇南山卓(一橋大学准教授)が、保育所の待機児童問題の“現実的”な解決策として「保育料引き上げ」を提唱している。

宇南山によれば、そもそも待機児童とは、保護者が希望しても保育所に入所できない児童のことであり、保育所への需要が供給を超過している状態のことである
 つまり需要過多といっても良いし、供給不足といっても良い。

 この解決策としては、まず保育所の供給を増やすことが考えられるが、費用がかかりすぎで限界があり、あまり現実的ではない。無理に増やそうとすれば、質の悪い保育所が乱造される危険もある。

 そこでこの筆者は、逆に需要を減らすことによって待機児童問題を解決する策を提唱する。どのように減らすかといえば、保育料を引き上げることである。

 経済学的にいえば、商品やサービスの価格が高ければ、それに対する需要は減少する。その考えをそのまま適用して、保育所を使うための保育料を引き上げていくべきというのである。
 保育料が高くなれば、それに応じて、保育所を利用しようという保護者は減っていく。
つまり、保育料が引き上げられて、保育所に入所を希望する保護者が減れば、待機児童問題は「解決」する、という主張である。

 (宇南山が言わんとしていることを、私なりに比喩を使って言うならば、あるラーメン屋に人気がありすぎて、客が殺到し、店に入りきらない客が路上にあふれている状態をイメージすれば良い。この状態を解決するにはラーメンの値上げをするべきだ、というのがこの筆者の主張である。ラーメンが高くなれば、そこに来る客は減って混雑は緩和され、みんな店に収容することができるから、ということだ。

  また別な比喩でいうと、有料指定席の通勤電車を思い浮かべてもいいだろう。京急のウィング号や小田急ロマンスカーなどは、指定席料金を払うことで、通勤ラッシュに悩まされず、ゆったり座って通勤することができる。この種の電車の指定席料金を払える人たちにとっては、通勤ラッシュは「解決」されている。

 宇南山自身が保育所をラーメン屋や有料指定席通勤電車に喩えているわけではないが、言っていることは、これとまったく同じ理屈だろう。)

 正確にいえば、保育所に子どもを入所させたい者が絶対的な意味で減るわけではなく、“高くなった保育料を払ってでも”保育所に入所させたい者が減るだけである。
 ただ、“高くなった”保育料を払えない保護者は、保育所に子どもを預けること自体を諦めるので、そもそもその子は待機児童にはカウントされなくなり、待機児童問題は「解決」することになる。

 そうなると、高い保育料を払える者しか子どもを保育所に預けることができなくなってしまうが、これについては、宇南山は望ましいことだと考えている。
「女性の活躍や人的資本の有効活用の観点からは、賃金水準が高く、就業継続の意欲が強い保護者を優先的に入所させるべきだ」というのである。
 つまり平たく言えば、カネをたっぷり稼いで高い保育料を払える親が優先的に保育所に子どもを入れられるのは、経済的効率の観点から望ましい、というのが宇南山の考え方である。

 (とはいえ、母子家庭などの社会福祉的側面にも配慮が必要であることを否定してはいない。その場合の対策としては、現金給付で対応するということを宇南山は提唱している。つまり経済的困難などで子どもを保育所に預けて働かなければならない人たちへの対策としては、保育所への優先入所ではなく、現金を直接給付して、保育料を払えるようにしてやれば良いということのようである。)

 もっとも、ここまで言い切ってしまうなら、保育所への公的支援など必要なく、すべて民間企業任せにして、純粋に市場競争の原理で保育料を決めれば良いことになってしまうのではないかと思うのだが、宇南山はそこまでは徹底せず、「もちろん保育に対する公的負担自体は合理的だ。保育所は、女性の就労支援、幼児教育、子育て負担軽減など多くの役割を果たしており、結果として少子化解消策や女性活用など私的便益を上回る社会的メリットを産み出すからだ。」と述べている。
 ただしそういう部分と、「経済効率からいえば、高く稼げる親が優先されるのが望ましい」と主張する部分とがどういうふうに矛盾なくつながっているのか、この記事だけではよくわからない。

 私としては、ここでは宇南山の主張を別に否定も肯定もするつもりはないが、「希望者全員が保育所に子どもを入れられるわけではない」という状況の中で、どのように保育所への入所枠を配分するかという問題への一つの答えではある。宇南山のような考えに賛同できない人も当然いるだろうし、そういう人は別な解決策を考えているのだろう。

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