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百田尚樹『今こそ、韓国に謝ろう』

 百田尚樹の著書『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)が売れているようだ。

 百田の真意は、もちろん本気で韓国に謝ろうと言っているわけではなく、「日本は発展途上だった朝鮮を併合して社会を近代化させた」ということを前提にして、「勝手にに社会を近代的に発展させてしまってごめんなさい」ということで、皮肉のつもりである。
 
 ここで百田は、日本が韓国を併合したうえで発展させた例として、近代的な教育制度の確立、身分制度の廃棄などを挙げている。

 (さすがに百田は、日本が善意で韓国を併合して近代化したなどとは言っておらず、教育の近代化も「日本は使える労働者を育成するためにやった」「いずれは日本中の工場や会社で回収できると考えたに違いありません」「要するに自国のことだけを考えてやっただけのことなのです。」と述べている。)

 私は細かい事実関係について検証できる立場ではないが、この著書で百田が挙げている例には、おそらく、真実も誤りも混ざっているのだろう。

 たとえば百田は、1905年時点で朝鮮半島全土に小学校が40校しかなく、その5年後の1910年の韓国併合時にも60校増えて100校程度しかなかった、という。
 1910年時点で小学校が100校というのは、どうやら事実のようだが、だからといって併合前の朝鮮にほとんど子どもの学校がなかったというわけではなく、私が調べてみた限りでは、1908年頃には、外国人宣教師などの経営する私立学校が全土で2,200校、さらに伝統的な「書堂」と呼ばれる塾(寺子屋類似だろうか)が全国に1万以上あったようだが、そのような事情については百田は触れていない。

 また百田は、日本が併合して小学校の義務教育を全土に広めたかのような書き方をしているが、実際は、併合当初に日本が作ったのは、小学校ではなく4年制の「普通学校」であり、しかも義務教育ではなかった。義務教育の導入を計画したのは第二次世界大戦中のようだが、実現前に日本は敗戦で撤退することになった。義務教育を始めなかった理由はわからないが、機会があれば調べてみたい。

(出典を細かく紹介する余裕はないが、たとえば
 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/29085/1/22_P19-92.pdf
を参考にしてみた。なおこの論文は、一昔前のマルクス主義の独特な用語法や糾弾口調が充ち満ちているので、若い世代の読者の方にとっては古語のようで非常に読みづらいかも知れないが、その点はご承知おき願いたい。あくまでデータ的な部分だけ読めば良い。)

 ともあれ、百田のこの本はそれなりに売れているようなので、まず書かれている事実やデータのレベルで、どこが正しくてどこが誤っているのか、専門家(歴史学者等)が何らかの検証・批評をすることが望ましいと思うのだが、そういうことにいちいちつきあう専門家はいないのだろうか。
 学者たちはこの本を見ても「右派の作家の書いた安っぽい嫌韓本(?)なんか、気にしていられるか」と思っているだけで、黙殺するつもりなのかも知れない。

 しかし、右か左かの問題ではなく、そもそもこの百田の本で挙げられている内容がどこまで正確なのか(間違っているのか)だけでもある程度検証して世間に説明しておかないと、この本はそのまますべてが真実であるかのように受け取られてしまうのではなかろうか。

 なお韓国の知識人にの間でも、当時の大韓帝国が改革を怠ったため、民心を失い、民衆はむしろ日本の支配による改革に期待をかけた面があったことを指摘する見解もあるようである。たとえば中央日報の次の記事参照。

失敗した大韓帝国の改革政策、日帝強制占領のきっかけに

 ところで、日本による併合支配が、その目的や程度はさておき韓国の近代化に何かしら寄与したのは真実だとしても、そこからさらに一歩進めて考えてみる必要がある。

 日本と韓国が逆の立場だったら、どうだったろうか

 仮に、朝鮮が日本より先に開国・近代化して富国強兵を推進し、まだ遅れていた日本に軍隊を派遣して、「日本統監府」「日本総督府」のような機関を設置し、朝廷や幕府を解体し、寺子屋を解散させて、朝鮮式の学校教育を日本人に与え、「磔や獄門はいけない」といって近代的な刑罰制度を行い、日本の皇族を李王家に準ずる身分として扱うなどしていたら、日本人は韓国に感謝しただろうか。

 何事も逆の立場で考えてみることは重要だろう。

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