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ミクロ経済学が想定する労働の世界はクラウドワークだった!

専門外の経済学の話なので誤解があればご指摘いただきたいのだが、教科書的なミクロ経済学の世界で「労働市場」について考えてみると、概ね次の通りだろう。

 ここでは、労働者も企業も、賃金の金額だけを判断基準として行動し、いくらでも自由に労働力が移動することが前提となっている。(つまり賃金以外の他の条件は考慮しないという仮定に立つ。) どの程度の労働者が雇用されて、その時にどのような賃金の水準になるかは、労働力の需要と供給が一致するところで決まる。

 まず企業の行動(=労働力の需要)を考えてみると、賃金が上昇すれば、企業の中には雇えないところもでてくるので、労働力に対する需要が減り、下落すればその反対となる。

 次に労働者の行動(=労働力の供給)はどうかといえば、賃金が上昇すれば、働きたい人間が増えるので、労働力の供給は増え、下落すれば減少する。  

 このような労働力の需要と供給が一致するところが完全雇用の状態であり、これに応じた賃金が完全雇用をもたらす賃金ということになる。

 (ただしここでいう「完全雇用」というのは、およそ世の中の働きたい人間がすべて雇用された状態をいうのではなく、「その賃金で働きたい人間がすべて雇用される状態」を意味する点に注意。
  たとえば世の中に労働者が100万人いるとして、「賃金時給1000円、70万人」が労働の需要と供給の一致する点だとしよう。この場合、時給1000円以下で働く気のある人間は全員雇用されているので、「完全雇用」である。ただし時給1001円以上で働きたい人間(30万人)は雇用されることなく、あぶれる。逆に言えば企業の側も、時給999円以下でだけ雇用したいという企業は、誰も採用することができない。労働者が来なくなるからである。1000円以上で雇用できる企業は、すべて労働者を採用できる。)  

 これが経済学でいう最適な労働市場の状態なのであって、政府の介入は有害だというのが、純粋な経済学上の帰結である。
 たとえば政府が強制的に最低賃金が時給1500円になるように規制すると、999円以下でしか雇用できない企業に加えて、1000円~1499円までの範囲でしか雇用できない企業も、採用できなくなる。このため、雇用は70万人よりも減少してしまうというわけである。

 あくまでこれは様々な仮定を設定したうえでの理論上の世界であって、実際の雇用の世界と違うということは誰でもわかるところである。

 ところが近年、このミクロ経済学の想定する労働市場の世界に近い状況が生まれてきた。それが、いわゆるクラウドワークの世界である。

 クラウドワークでは、依頼者は、仲介企業の運営するウェブサイト経由で、一定の報酬を提示して仕事をしてくれる人を募集し、それに対して無数の人間が応募して、契約者が決まり、仕事をしてもらって報酬を支払う。 仮に提示した報酬が少なすぎて人が集まらないなら金額を上げるだろうし、その逆も成り立つ。そして1つ1つの仕事が終わればお払い箱となる。 クラウドワークで募集される仕事の内容は、自動車運転から記事執筆までいろいろである。

 いわゆる終身雇用が労働市場を硬直化させて資源の適切な配分を阻害する、という一部の経済学者の非難も、こういう世界を想定して初めて感覚的に理解できる。 クラウドワークの世界で、一部の人間だけが何十年も継続的な契約を保証されたら、確かにいろいろとおかしなことになる。

 解雇の徹底した自由化を主張する学者(たとえば福井秀夫教授や八田達夫教授)から見れば、終身雇用を原則とする日本企業は、一部の人間だけ終身契約をしている、歪んだクラウドワークのように映っているのであろう。

 もちろんここでは、今後すべての企業の職場がクラウドワークに近づいて行くべきだなどと主張する意図は一切ないので念のため。

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